新時代の機能回復法としての加圧 ー脳梗塞・井上あずみさんの事例を踏まえてー

『天空の城ラピュタ』や『となりのトトロ』の主題歌で知られる歌手・井上あずみさんは、2023年に脳出血により倒れ、緊急手術と長期リハビリを余儀なくされました。

回復過程では加圧機器を使ったリハビリを導入しました。空気圧を使って神経系に刺激を与え、感覚神経・運動神経への再教育を進めました。特に「麻痺側の筋肉に対する刺激や、血流促進による機能改善に手応えを感じた」といいます。

娘さんとともに発声・音楽のトレーニングも行い、加圧+音楽+家族の支えという三位一体のリハビリに取り組み、2024年11月に車椅子でステージに復帰。多くの人に感動と勇気を与えました。

井上あずみ、脳梗塞

リハビリで加圧トレーニングを行う利点とは

筋力強化目的に開発された加圧トレーニングですが、近年では医療・介護・リハビリ現場でも補助療法として活用が広がっています。脳神経系や整形外科、慢性疾患のためのリハビリや、高齢者の機能回復、介護予防といった分野ですでに用いられています。

リハビリの分野で加圧トレーニングが行われる理由は、「軽い運動でも筋力や血流を効率よく回復できるから」です。

特に、ケガや手術後、体が思うように動かせない時期でも、関節や心臓に負担をかけずに筋肉を刺激できるのが大きな利点です。また成長ホルモンの分泌を促し、回復力を高める効果も期待できるため、早期機能回復や再発予防に役立ちます。

簡単に言うと、「安全に、短時間で、しっかり効く」――それが、リハビリで加圧トレーニングが選ばれる理由です。

医療・リハビリ専門家の視点

医者、相談

1. 医師・リハビリ専門家はどう評価しているか?

多くの医師や理学療法士が加圧トレーニングを「安全性が高く、早期機能回復に寄与する手法」と評価しています。9年間の寝たきりだった方が10ヶ月の加圧トレーニングで立ち上がれるようになった事例や、脳性小児麻痺の患者が膝立ちや足の曲げ伸ばしができるようになった事例もあります。

そういった事例を踏まえて、特に以下の点が医療従事者に評価されています。

  • 関節に負担をかけずに筋力を回復できる
  • 筋萎縮予防と血行促進を同時に行える
  • リハビリへのモチベーション維持にも貢献

獨協医科大学では、加圧トレーニングをリハビリテーションに取り入れる研究が進められています。特に、サルコペニアやフレイルの予防・改善、筋萎縮の回復、疼痛緩和などにおいて、加圧トレーニングの効果が期待されています。

2. 対象となるリハビリ患者

疾患・症状 加圧トレーニングの活用
脳梗塞・脳出血後の麻痺 筋再教育・感覚刺激・可動域改善
骨折・関節手術後 筋萎縮の予防、早期筋力回復
パーキンソン病・神経難病 自律神経・血流刺激による緩和効果
高齢者の機能維持 立ち座り・歩行機能の維持と転倒予防

加圧トレーニングを避けるべきケース(※医師と要相談)もあります。特に高齢者や内部疾患がある方は、医師と加圧トレーナーの連携が必須です。

加圧導入時の注意点と安全管理

  • 認定トレーナーや理学療法士の指導が必要
  • 血栓症・重度の心疾患・妊娠中などは状態悪化の恐れもあり、医師と要相談
  • 血圧・痛み・しびれなどの体調を確認しながら行う
  • 血流を制限するため細心の注意を払う

加圧トレーニングは特殊なメカニズムによって成り立っています。正しい知識とノウハウが必要です。医師の許可と、第三者機関から認定を受けた経験豊富なトレーナーによる指導が望ましいです。

当センターには認定トレーナーの中でもさらにハイレベルな基準に合格した「加圧スペシャルインストラクター」が在籍しています。

加圧トレーニングは“再起を支える”力になる

加圧トレーニングは、筋力の回復・血流の改善・成長ホルモンによる再生促進を同時に実現する、非常に汎用性の高いリハビリ手法です。

井上あずみさんのように、「あきらめない心」と「科学的アプローチ」を掛け合わせることで、誰でも“動きたい・話したい・歌いたい”を取り戻すことができる可能性があります。

加圧医科学センターでは認定インストラクター養成講習や各種加圧機器の販売を行っています。ご興味のある方はぜひ当センターまでご連絡ください。